☆序章・神噐『寶』の解明点
印文の全体的解釈と、その中国皇帝の「寶」としての秘めたる重要性をまず説明いたし
ましたが、はじめに示した通り、この「寶」は歴史上一切秘密とされ、多くの謎が隠され
ているものと思われます。
そして印文には、我々の計り知れない、神秘の道教世界、「太極宇宙」が秘められている
と想像されます。恐らく謎解明の道には想像も出来ない歴史の大海原が予想されます。
そこで、これから本書で解明を試みるこの神噐「寶」の実像に対して光をあてるべく全
体の基本的観点は何かということを整理し、航海の道筋を明らかにしておく必要がありま
す。
つたない知識ではありますが、現時点で考えられる観点を列記し、今後の道標といたし
ます。
<歴史的観点>
● 「寶」は、何時の時代、どの皇帝が勅令を発し製作を命じたものなのか。 ● 「寶」製作の真の責任者・及び印文の奏上者は誰か。 ● 「寶」が当時どのような政治的意図で作られたのか。 ● 後世の史書に、この「寶」のその後の詳しい文献が見当たらないのは何故か。 <道教からの観点> ● 「道教」とはどのような宗教なのか。 ● 印文にある「太上老君」とは。 ● 「寶」が神秘の宗教と言われる道教の「寶」の印であるなら、どのような謎、 また真理を秘めているか。一説に聞く最高の秘術と伝えられる隠形術とはどのような術か。 ● 道教には、あらゆる道の法術があると聞く、一説に聞く最高の秘術と伝えられる隠形術と はどの様な術か。 <印章としての観点> ● 古来より天子・王者の印は、ほとんど「玉」璽、即ち“玉印”であるべき筈なのに、な ぜ「寶」は“焼き物”なのか。 ● 印章・印鑑に今日、吉相印などと言われるが、はたして、神・皇帝の印である「寶」に、 そのような事が秘められているのか、もし「寶」が完全無欠、最高の吉相印であるなら、 いわゆる“完璧”の如きものを製作したと想像されるが、果たしてどのような印章が完璧 なのか、易哲理が秘められてあるのか。 ● 中国皇帝の紋章は通常「龍」である筈なのに何故「獅子」なのか。 ● 獅子と観える紐の神獣に果して、どのような謂わくが隠されてあるか。 ● 中国文物に獅子が非常に多いが、それと関係があるのか。 また、我が国の唐獅子、狛犬などに関係があるのか。 ● その他この紐、獅子の不思議な造形にどのような伝説神話が隠されてあるのか。 <陶磁器として観点> ● 印章の書物に「陶印」に関する詳しい内容が殆ど載っていないが、中国に陶印 はあったのか、また日本にあるのか。 ● 中国の陶磁器に間違いは無いが、いつの時代の白磁なのか。 ● 窯場はどこか。 <篆刻からの観点> ● 篆刻の技法に何か秘密が隠されてあるのか。 ● 陶磁器、とりわけ磁器の表面に文字は彫れるのか。 ● 印文の文言、漢字の画数などに何か秘密があるのか。 <易と漢字からの観点> ● 「寶」の安置場所はどこか・方位方角は、風水にかなっているか。 ● 文字と数術そして易との関係はどうか。 ● 易の太極とはなにか。 <中国の故事、伝説からの観点> ● 太古からの、伝説また故事との関連は。 ● 道教の神仙思想との関係は。 <到来文化・東南アジアの文化からの観点> ● 日本の到来文化に、「寶」の痕跡は見れるのか。 ● 東南アジアはどうか。 |
以上、現時点で考えられる問題点を想定しただけでも、その解明の作業は中国文化の、あ
らゆる分野に跨がり、恐らく史上これまで誰も試みたことのない、壮大な挑戦の書となる
事は必至です。
天印「寶」は現在、私の調べた限り、一切の史書及び中国研究の書に載っていない、未
知の「寶」です。
次に上記の問題点の幾つかの項目を確認すべく、これまで下調査した天印「寶」の現場