第4
章8・「寶」アポロ計画



 漢大宇宙・大極圏にほぼ突入した、宝船「大和」の航海は果てしなく続いております。

この8爻と卦した4章もなんとか無事に乗り切る観通しが立ちました。

 東大の宇宙工学研究所に依頼せず、全く独自で、しかも突貫工事で建造した「大和」で

す。図面作成は朝日山公園と我が母校のすぐ近く、岩崎鼻灯台(愛称・岩崎鼻“東大”)昼

の工場は図書館、そして書斎四畳の「獅子窟庵」と「三陽」の事務所は夜間工事です。

 我が母校は商業高校です、イタズラと遊びは東大クラス、しかも成績は評価以前“見事”

なものでした。いかんせん文学的にも科学的にも根本的基礎学力が余りにも劣ります。こ

のため現在も読者にひどく船酔を強いているが、ダンボール6杯の実戦訓練の贈物で以前

より、多少おさまって来たとの乗組員の評価です。今宵は私の誕生日、しかも満天の星空

です。そこで少々生抜きのために閑話をさせていただくことにします。

 最早、遥かな彼方に旅だった『大和』(アポロ11号)の代わりに、昨年暮れ、本書の仮

仕上げの合間に見知りの骨董屋で、虎の子のヘソクリで買い求めて来た「獅子」の置物が、

書斎の棚に同じ程の「龍」の文鎮と向き合って置かれてあります。その後ろの遂に居並ん

だ『大漢和辞典』には貫禄負けするが、それでも小さいながら威風堂々と構えて、書斎の

“邪気”を払ってくれています。

 手に乗る小さな獅子で、よく鋳造されてある一品です。駟のように大きな尾を高く跳ね

上げて、ちょっと威張り、なかなか度胸がありそうな感じで、それでいて愛嬌があって面

白く、地金も良い。疲れたとき、時々手に取り顔あたりを撫でてやると、私に似た獅子鼻

であり、なかなか憎めない奴です。

 書斎の突き当たりに牡丹の花を描いた色紙、入り口の鴨居に自製の「獅子窟庵」と書い

た表札が掛けられ、本棚の上に掛かる棟方の“獅子窟の叫び”がその三面観音の版画もさ

ることながら私の胸中を深く察してくれます。書斎の獅子の愛称は“アポロ12号”です。

 ここで大ざっぱですが、ここ四年、少し現実から遠ざかって生活しているので、せめて

「寶」の事業計画が、どのくらい膨大な費用を懸けたものか計算して見るのも一興です。

 おそらく玄宗皇帝も、私同様、金銭感覚に、欠けるきらいがあったと思います。さらに

天子のことです。恐らく、費用のことは無頓着、不問であったろから、計算した請求書に、

私が費やした時給総額を添付して、届けてもらうことにします。アポロ11号と比較する

と、性能は比較以前の問題で、荷は重いが、充満した書斎の熱気でアポロ12号打ち上げ成

功も夢ではないかもしれません。

 次の「5章1項」本書の中天に特別に設けた章で、詩聖“杜甫”に贈る感謝状も合わせ、

この12号に届けてもらわねばなりません。

 祖父とウリふたつの、“布袋”の焼き物、茶棚に螺鈿で細工された“竹林の七賢人”木彫

りの“利休”文鎮の“龍”皆々応援するそうです。

 アポロ12号に、この願いを託して今宵の夢を託することに致します。

「寶」アポロ計画  請求明細書

 

<「寶」制作・組織体系>

1・総合統括本部 2・一般庶務 3・窯係り 4・造形部

5・施釉部 6・陶土部 7・焼成部 8・鉱山採掘部

9・技術開発部 10・燃料調達班 11・燃料、陶土輸送班

12・篆刻部 13・請神呪術部


<延べ人員計算>

(1)制作期間22年 (前後2年を値引きいたします)

(2)年間稼働日数300

(3)常時総動員数 10,000

   22年×300日×10,000人=延人員6,600万人

<人件費>現代邦貨に換算して一人当りの日当

     15,000円(社会保険及び諸費用込み)

     15,000円×6,600万人=9,900億円(総人件費)


上記の金額に、各残業手当て、及び3の窯係り、4の請神呪術の夜間手当てをプラスする

と、合計1,000,000,000,000円です。(1兆円)


「寶」関連事業費

1・泰山封禅・印文奉納の儀 2・道主皇帝就任式典

3・東京・玄元皇帝廟建立費 4・西京・玄元皇帝宮建立費

5・「寶」奉納式典日 6・奉納教典編纂事業費

7・全国「寶」完成記念「道観」建立費

8・『老子道徳教』全戸配布費用 9・その他の記念事業


上記「寶」関連事業及び完成記念事業の総費用は、「寶」焼き上げ総費用を上回ることは

確実です、算定不能ですので、請求金額には入れません。合計金額の欄に国庫の90%

支出で算定不能で一応“莫大”とだけ記しておきます。

尚、712年太極の年号から璽を「寶」に改称するまでの6年の準備期間の動員人件費・

諸費用は全て計算から除外いたしました。

<平成承禎・請求明細>

1.執筆時間 一日平均15時間

15時間×365×6.5年=35,500時間

2.「寶」購入費用・調査機関および出張費用・仮出版費用“請求放棄”

平成承禎の個人的請求は、先に算定した金額だけでも現在の彼の現状では、とても無理

と思われ請求を断念致しました。

恐らく、気前良く、ピンとくる英明な玄宗皇帝です。司馬承禎が『貞一先生』の尊号で

すから、せめて私の名に因んだ「貞三先生」の称号を与え、合わせて承禎同士の姉妹都

市計画、もしくは洛陽の名誉市民の称号を贈呈し紫虚君君は勿論、巻末「吹き・平成承

禎」に記した・関係者各位、影の功労者全員を、噂に聞く「太極殿」に招待し、確か“万

漢全席”と聞く宮延料理を振舞ってくれる筈です。

・・・しかし彼の威信も「安史も乱」で矢墜したので、期待が外れるとガッカリするの

で、一応あてにしないで待つことにしよう。

 なお第一章14で解説した「官窯」の天円地方ピラミッド造営人件費は計算にいれてあ

りません、あくまで全ての計算は確実、最低限の数値であります。


郵便番号 0123-6-99999

宛名   大唐政府 玄宗皇帝様

宛先   大極圏・中央区中天・六丁目「太微宮」町159番地


 この神噐「寶」の総事業は大極の年号712年の準備から約30年をかけた大唐の国家プロ

ジェクトでありました。

 ・・・・・もう午前2時をまわりました。

 書斎の熱気と喚声は最高潮です。打ち上げ準備は既に秒読みにはいりました。今夜はア

ポロ12号、打ち上げ成功を夢枕と致します。

平成9年7月14日(祇園祭り)

 たしか「五」と「一」の記念すべき誕生日である。

                                 平成承禎より