第3章6・印文「九」と「五」文字「六」画




 「寶」に印された全九文字、この「九」は古来より聖数として君位の数と『漢書武皇帝

紀』に載るそうです。

 この「九」の数は第1章「易と天印」で示したように、“王者の数”です。道教では、宇

宙創世の数位です。

 老子伝説に混沌宇宙より九億九千九百九十九万九・・・・・・・その又九億九千・・・・

万年後に“一気”が生じその又九億九千九・・・・・年後に「老子」が天界より地上界に

降臨したといわれます。

 また老子は日に九度姿を変え、九×九、八十一日母の胎内におり、生まれた時すぐに、“九

歩“歩いたという伝説があります。

 大唐の先祖・道教の開祖である老子にまつわる、必須の数であり、王者の九数は「寶」

に不可欠、絶対の数なのです。

 『周礼』の「考工紀」に唐の長安城について、国の都は方、九里、道は南北九本・東西

九本と記され、天子の宮城は九重九門とあります。

 天下は九州であり、地上界全ては天子・玄宗皇帝の天下であることを示し

ております。

 唐代の息吹を現代に伝える、唐代寺五重の塔の最上部は九輪の宝輪です。“八重に九重”

“九十九里”を見るまでもなく、九は最上位、永遠です。古来、伏犧・神農・黄帝・堯・

舜・禹・文王・周公・孔子を九聖を言います。

 開元の政治を断行し、大唐の天下は政治・経済・文化に未曾有の発展を遂げ、今や史上

類例を見ない黄金時代を築いた玄宗皇帝は、この九聖を越えた“有徳の帝王”です。

 その九文字の中央に白獅子が守護し星座する黄帝と一体となって九文字に祀られて、し

かるべきです。

 その中央・中天は日月・陰陽の二気より生じた木火土金水・五文字であり、これを制

するは、「甄陶」天下です。

 日月、木火土金水は天印「寶」と中国皇帝文化の大動脈「陰陽五行思想」です。

 また、日のあたる獅子の背の鱗は九枚、そして子を宿した3章その爻、6項に隠された

腹の鱗は六枚です。

 玄宗のイニシャル「玄」は五画、中央「五」文字、その中天「老」老子と表裏する幽玄

の「六」の数を秘めます。

 印文全九文字、中央五文字、その道教の“玄”なる“太微”に玄宗皇帝は秘められてい

るのです。

 おそらく、昇仙した玄宗は、この「五」「六」「九」の数位に、再び現世への再生を祈願

したであろう。