第3章1・道教霊府



 図1は『「道教」の大辞典』(文献4)に掲載されたもので、今日では都市の守護神・城

隍神を祀る廟の、民衆向けの霊府であるといわれます。

 城隍神と言う文言からして、昔は宮延また宮殿を守る高次元の霊符であったと想像され

ます。この霊府の最上部に「三清」即ち、第1章9「印面篆刻絵画」図1に載せた「寶

」の印文“三行体”と同じ神を符号に秘めてあります。

 また「寶」の「勅」がその下に「勅令」と大きく書かれてあります。

 その他、五雷神・火の神・鬼などの図象も、悪霊をはらい、一家平安などのために描い

ています。

 注目すべきは、この符中央の印で、上部両側に月と日の文字がハッキリと見え、そして

星がそれを取り囲んでいます。そしてその中央、重なって分かりにくいですが、そこに「太

上老君勅令」と朱書きされると解説があります。正に「寶」に秘めた神知を、「図」や「言

葉」「印」「符号」等あらゆる方法で示した霊符なのです。

 『道教と日本文化』(文献3)福永先生が推定しておられる通り、日本の伊勢神宮の御神

体が、八角形八稜鏡である事が確認不可能であると同様に、神噐「寶」の秘密をめぐるあ

らゆる伝承から推測される事柄を霊符の呪文に変え伝えたものであろう。

 天隠“隠密の勅令”のヒラメキは、『「道教」の大辞典』(文献4)に載る道教の奥義「隠

形術」と上記記述が私の脳裏に稲妻を走らせたのです。

 図2は、台湾のごく一般家庭に揚げられた板絵であるという。

 頭上には、太極宇宙、獅子王に跨がるのは「北極神」であるという。そして挙げた手に

「正」の文字を高く掲げています。この”正”を『大漢和』に見ると“道”北斗の第1星の

指す所“とあります。関連して見ると「正印」は”星命家が印綬の兩干の相配合するものとあり

ます。「正一」は第2章で予告した司馬承禎が師より授かった修練法を指します。いずれにしても、

この二つの図に示された内容は全て、
1300年前この神噐「寶」に秘められた神知を今日に伝承した

ものです。

 勿論後世の道家が色々考証した事もあろうが、図1の霊符に記された文言及び符号の大

本は「寶」からです。そして天隠の符号や文言がどうして今日に伝承されたのか、いずれ

本書の何章(第8章6)かで、その歴史の原因を確実にお伝えすることでしょうが、今い

える事はすべて一切の“源”はこの「寶」であろうという事です。