第1章8・「寶」の方位
印面の上方「太上」の「太」文字方角は真「北」である北極星の位置する方位です。
以下、図(1)写真(2)を御参照ください。
獅子は体正面に向けず、正確に四分の一だけ首を振り、文字方向の真横に顔を向けてい
ます。これが実は私にとって大問題でした。神噐「寶」は絶対に無比の印ですから、二つ、
つまり“一対”である筈が無いのです。我々が神社などで見かける、獅子及び狛犬などは
一対です。うっかりして、一対と考えると、太極であることの真偽が問われます。この問
題は重大であり、ここに絶対に何か重大な秘密が隠されている筈であると絶えず意識の底
にありました。
その回答は“君子南面” “臣下は北面”です。天の子である天子は宇宙の唯一の神{北
極神}の子で、北を背に鎮座します。獅子は一対ではありません。神噐「寶」は絶対の「一」
です。獅子の体の向いている方角は、皇帝の居城の方角であるとすれば、神噐「寶」の納
められた神殿は、その反対側です。
体の向きは皇帝守護、顔の向きは君子南面とした筈です。
古来の礼法に「左祖右社」の言葉があります。つまり印文に向かって右、神殿の位置か
らは先祖を奉る宗廟の地です。本書の第六章で史実と詳しく照合しますが、とにかく老子
「太上老君」は唐朝の先祖です。唐代には長安と洛陽と言う二大都市が共に繁栄した時代
であり、洛陽は長安の東の方角です。唐代、洛陽は唐朝・宗廟の地で、印文「中央」「老」
は前項で示めした、「天下の中心」「洛陽」に符合し、獅子の体方角に、ピッタリと合致する
のです。獅子は神の守護神であり天子と同じで、当然南面です。
神噐「寶」の安置場所、神殿は、長安真東の方向、洛陽と推理されます。これは「寶」