第1章4・印台の側面の情景
台座の四方「完璧」の壁面は、道教の霊山に神仙の「太上老君」が降臨する情景を
描いたものです。全て「天隠」であります。尋常一様な手法ではありません。
この章2で述べた三才の「人」の壁面下地の色は、霧に覆われた霊山の岩肌の色を
合わせて表現し、「嵌入」は「雷」を表し、「窯変」の雲は「風」を表します。「雨」
は嵌入と雲で連想させます。
即ち「地肌の色」「嵌入」「窯変」の全く違う異次元の手法を壁面の同次元で駆使し、
神仙降臨の序曲、その情景を描いたのです。
その中には道教の神「風伯」「雨師」「雷公」の自然神を秘めたのであります。とり
わけ、開祖「黄帝」は“雷神の子”とも伝えられ、この「雷公」を「嵌入」で現すとい
う、実に特別な手法で描いたものです。これは一見簡単なようで、尋常なことではありません。
側面の細い嵌入は壁面に実に比率よく這いながら、しかもその走りは稲妻のごとき天を裂く
激しさです。この壁面の地肌の色と雷神の嵌入、そして雲の窯変がもたらす天変の情景を焼き
上げるだけで陶工たちの想像できない火との戦いが観えるのです。全く想像もできない「嵌入」
と言う“予測不可能”な“不確定要素”を明確な創意をもって、焼き上げたのです。
印面の大地は、印台の四方、四季に描かれた風、雨、雷に代表される大自然の恵みを受け、
天下は見わたす限り黄色の世界、大豊作です。
まさに、農耕の民にとって重要な大自然の神々と、神仙降臨という二つの「寶」にとって必要
不可欠な情景を連想させる壁画を描いたのです。