第1章13・神噐「寶」制作の意議
神噐「寶」は何故制作されたか?
この問いかけに対しての答えは、いずれ読まれる皆さんに本書全体を通し得心いただけ
るよう解答を示すつもりですが、恐らく、この神噐「寶」制作勅令を下した皇帝の意思は、
新時代の到来を天下に示す為の決意の表明であったと想像するのです。
それまでの皇帝の象徴であった「龍」に代わり、獅子「白澤」を天下の象徴としたのは、
その現れです。
「元」を“開”き、政道の再建を、祖先の“最高神”である「太上老君」に祈願し、開
いた元より、現世にその降臨を願う、そして、あらゆる政道を“元”に正し、かつ新時代
を“開”く、これを政治的に名付けるなら「開元」時代とよびます。
この「開元」と呼称する新旧一体となった新時代のシンボル、それが獅子を戴く「寶」
なのです。
序章「黄帝」で述べたとおり、獅子「白澤」は“有徳の皇帝”の御代に現れると伝説に
あります。
2項の「天地人三彩の秘密」で明らかにした通り、印面天下は黄色で、伝説の聖帝はす
でに地上に降臨しています。
即ち、自らを有徳の帝王「黄帝」の再来と自認し、印文に示した道教の神と一心同体と
なり、時の皇帝自身が道教の「主」となる決意の表明です。
この皇帝に宗教的、尊称をつけるなら、「道」の「主」の皇帝ですから「道主皇