第四章(三)『明器の請願制』

 

 

 
                                              世界美術全集 小学館より転載

先の「世界陶磁全集隋唐編」に載る、驚くべき記述を今一度確認しておきたい

@中晩唐にかけて白磁が盛んになり“磁器史上ただならぬ時代”であったと言う

Aこの様な大きな変化がどの様にして起きたのか“謎である”と言う

B 研究者の努力にも関わらず“窯跡”が発見されていないと言う

 

正に世界の陶磁研究者が未だ果たせぬ謎なのです

「寶」発見は陶磁史を塗り替えるのです

ここに「旧唐書」に載る、更に重大な記述を載ます

 

開元(太極)元年、左司郎、明器の製作すべて請願とする(旧唐書)

まさに玄宗皇帝の勅令が全土に発せられたのです

太極元年は「寶」製作開始の年です

「明器」とは王侯貴族が墓に入る時、死者を慰めるためのミニチュアの焼き物です

それらの殆どは唐三彩の焼き物です

それを全て政府に届ける旨の勅令を発したのです

それは何故か?!

「寶」焼成のため中国全土の陶工を一箇所の窯場に集結させたのです

王侯貴族にとって明器は死後の大切な道具です

それを製作する全土の名工、陶工が全て召集されては大変です

王侯貴族の不満が爆発してはなりません

そこで唐朝は請願制度にしたのです

@の記述は中国全土の広範な地域から唐白磁が出土するのであろう

しかしそれだけ焼かれた唐白磁の窯跡が発見されないのは研究者に取って謎としか言い様

がないのであろう

いずれ本書で私がその窯場の答えを推理する所存です

メイドイン・チャイナは磁器の焼き物です

唐白磁以前の唐三彩は陶器です

「寶」の製作開始により、陶器から完全に磁器に移行するのです

陶器と磁器の分水嶺、中国4000年の陶磁史上、その頂点に輝くのが、この神器「寶」

です

まさに陶磁史は塗り替えられたのです!!!!!

                       平成1932